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徳島地方裁判所 昭和41年(わ)432号 判決 1967年4月26日

一、本店所在地

徳島市矢三町東張三八四番地

商号

西精工株式会社

代表者の住居

徳島市矢三町東張三八五番地の一

同氏名

西幸信

二、本籍、住居

徳島市矢三町東張三八五番地の一

会社代表取締役

西幸信

大正三年一〇月二〇日生

右両名に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官藤原彰出席のうえ審理して、次のとおり判決する。

主文

被告人西精工株式会社を罰金二、五〇〇、〇〇〇円に、被告人西幸信を罰金一、五〇〇、〇〇〇円に各処する。

被告人西幸信において右罰金を完納できないときは金一〇、〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人西精工株式会社は本店を徳島市矢三町東張三八四番地に置き、割ピン、ナツト等の製造販売を営むもの、被告人西幸信は被告会社の代表取締役として同会社の業務一切を総括処理しているものであるが、被告人西幸信は被告会社の業務に関し法人税をほ脱する目的を以て、鉄屑売却代金の一部を正規の帳簿に記載せず、これを簿外の架空名義の預金とし、また簿外の棚卸資産を設定するなどの不正の行為により、昭和三八年八月一日より昭和三九年七月三一日までの事業年度において、被告会社の実際の所得金額が別紙記載のとおり二四、六七一、九八六円で、これに対する法人税額が八、七七二、一四〇円であつたにもかかわらず、昭和三九年九月三〇日徳島税務署において、同署長に対し、所得金額が八、五八〇、六一五円で、これに対する法人税額が二、六九八、二〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、以て被告会社の同事業年度における正当な法人税額との差額六、〇七三、九四〇円をほ脱したものである。

(証拠の標目)

一、被告人西幸信の当公判廷における供述および検察官に対する供述調書

一、収税官吏の被告人西幸信に対する質問てん末書五通

一、登記官作成の登記簿謄本

一、徳島税務署長作成の証明書

一、波多野治、玉置胤敏作成の各供述書

一、島田秀水、古川早作成の各上申書

一、長篠顕治作成の上申書(証第二二号と押印ある分)

一、収税官吏の藤本勝已に対する質問てん末書

一、川村武作成の証明書三通

一、東洋信託銀行徳島支店作成の貸付信託元帳写七通

一、藤本正昭作成の証明書

一、木川繁一の検察官に対する供述調書

一、今井正治作成の上申書

一、西田富三郎作成の収税官吏に対する回答書

一、大島昭寿作成の収税官吏に対する回答書二通

一、長篠顕治作成の上申書(証第四〇号と押印ある分)

一、収税官吏の長篠顕治に対する質問てん末書六通

一、長篠顕治の検察官に対する供述調書二通

一、収税官吏の西佳昭に対する質問てん末書二通

一、西佳昭の検察官に対する供述調書

一、収税官吏の西輝行に対する質問てん末書

一、西輝行の検察官に対する供述調書

一、太田俊夫の検察官に対する供述調書

一、押収してある総勘定元帳一冊(昭和四二年押第二一号の一)、封入り決算書原稿一袋(同号の五)、封入り岩井、住友関係書類一袋(同号の七)、封入り39/7決算関係メモ一袋(同号の八)、封入り40/7決算関係メモ一袋(同号の一三)、「生産管理と表示する帳簿一冊(同号の一四)、封入り生産材料関係書類一袋(同号の一五)、封入り<秘>取引先カード七枚(同号の一六)、長篠原稿綴一綴(同号の一七)、封入り決算関係書類一袋(同号の一八)

(法令の適用)

被告人西幸信の判示所為は昭和四〇年三月三一日法律第三四号附則第一九条により、同法による改正前の法人税法第四八条第一項に該当するところ、国税に対する安易な認識から、同族相謀り計画的に判示犯行に及んだ刑責はもとより重大であるが、一旦管轄国税局による査察を受けるや、通常この種事案にみられるような証拠隠滅策を弄することもなく、卒直にその非を認め、また本件犯則に伴う加算税、延滞税等の諸税をも完済して改悛の情も顕著であること等の諸事情に鑑み、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内で同被告人を罰金一、五〇〇、〇〇〇円に処することとし、なお刑法第一八条を適用して被告人が右罰金を完納できないときは金一〇、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置するものとする。

次に被告人西精工株式会社に対しては、代表者たる被告人西幸信がその業務に関し判示所為をなしたものであるから、前記改正前の法人税法第五一条第一項により同法第四八条第一項所定の罰金刑を科するものとし、その金額の範囲内で被告会社を罰金二、五〇〇、〇〇〇円に処することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 田村承三)

(別紙)

被告会社の自昭和三八年八月一日至昭和三九年七月三一日の事業年度における所得計算(次表は犯則関係分のみの修正損益計算書)

(1) 貸方(収入の部)

<省略>

(2) 借方(支出の部)

<省略>

右によつて被告会社の同年度犯則所得は一六、〇九一、三七一円((1)(2)の犯則合計の差額)となり、これに公表所得八、五八〇、六一五円を加算した二四、六七一、九八六円が被告会社の同年度における実際の所得金額となる。

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